In-house SEO Meetup

インハウスマーケターのためのコミュニティイベント

ISM Virtual 2022 "SMX Advanced & MozCon Recap" 開催レポート

こんにちは、ISM 実行委員の高野です。

今回は 2022 年 8 月 19 日に開催したオンラインイベント ISM Virtual 2022のレポートをします。
今年で 3 年連続の開催になりますが、回を重ねるごとに内容が濃厚になっていくので、どのようにエッセンスを拾っていけるか楽しく悩みながら書いています。
(実際にセッションの時間も伸びています)

ISM Virtual 2022 で語られたトピック

今回のイベントでは、ISM Virtual 2020, ISM Virtual 2021 に引き続き、アユダンテ社 SEO コンサルタントコガン・ポリーナさんが直近で参加した海外カンファレンス「SMX Advanced」と「MozCon」から、注目のトピックを共有いただきました。

毎年 SEO 業界で注目される両イベントで語られた重要なトピック、それに対する海外の SEO 担当者の反応、コガンさんの考察など盛りだくさんなコンテンツです。

SMX Advanced と MozConについて

まずは両イベントの紹介から。

SMX Advanced

主催:Search Engine Land & Marketing Land

  • SEO と SEM の大規模カンファレンス
  • 2022 年はオンライン開催で参加費無料
  • 8/31 まで閲覧可能

公式サイト

MozCon Virtual

主催:Moz

  • SEO に特化した大規模カンファレンス
  • 2022 年はリアルとオンラインのハイブリッド開催
  • $299 でセッション動画の詰め合わせを購入可能

公式サイト


コガンさんによると、今回のSMX Advanced と MozCon でも昨年と同様に、以前から話題になっているトピックがほとんどだったそうです。

両イベントで合計 70 以上あったセッションのうち、今回は 14 セッションから厳選したトピックを紹介してくれました。

アルゴリズムアップデート

まずは、前回の SMX(2021 年 6 月)から 1 年間で起こった主要なアップデートの振り返りから。

  • 2021 年 6、7 月 コア アップデート
  • 2021 年 6~8 月 ページ エクスペリエンス アップデート(モバイル)
  • 2021 年 11 月 コア アップデート
  • 2021 年 12 月 プロダクト レビュー アップデート(現在は英語のみ)
  • 2022 年 2 月 ページ エクスペリエンス アップデート(デスクトップ)
  • 2022 年 3 月 プロダクト レビュー アップデート(現在は英語のみ)
  • 2022 年 5 月 コア アップデート

+その他のマイナー アップデート

こうして時系列で確認すると、我々は平均して 2 ヵ月に 1 回ほど何らかの大型アップデートに遭遇していることになりますね。
ちょうどイベントの当日に helpful content update の発表があったこともあり、皆さん敏感になっていたトピックだったと思います。

毎回大きな変動が起きるコア アップデートとは対照的に、導入前に騒ぎが大きかったページ エクスペリエンス アップデートは、Google の公表通りに順位への影響は少なかったです。
一方で、コア アップデート並みに変動が大きかったのがプロダクト レビュー アップデートとのことです。

ここで、各アップデートの内容について初見の方のために、参考になる Google 公式記事を紹介します。


上記の中でもプロダクト レビュー アップデートは、現在のところは英語での検索のみに適用されていますが、他の言語への展開も予告されているので、こうした先行事例を知ることは今後の対策の検討材料になりますね。

プロダクト(商品)レビューの理想形としてコガンさんが紹介したのが The New York Times が運営する Wirecutter という米国のレビュー サイトです。

商品の比較において、以下のようなコンテンツを掲載することで、非常に高い権威性と信頼性を有しているとのことです。

  • 項目数
  • 商品数
  • テスト数
  • テストの内容
  • テスト人員数
  • スコアリング基準
  • サイトを信頼できる根拠
  • 在庫切れの場合の代替商品の提案


権威性と信頼性というキーワードでお気付きの方もいると思いますが、ここからセッションは次のトピックである E-A-T に移っていきます。

E-A-T

E-A-T とは

  • Expertise = 専門性
  • Authoritativeness = 権威性
  • Trustworthiness = 信頼性

の頭文字を取った略称で、Google の検索品質評価ガイドラインに記載されている、コンテンツ評価の基準の一つです。

英語ですが、以下の記事にて詳細が確認できます。

また、コア アップデートに関する Google 公式ブログで紹介されている他の記事も参考になります。

コガンさんが着目したのは、「E-A-T の重要性が高まるにつれ、誤解も増えている」という点。
何のコンテンツにでも表面的な E-A-T を加えれば良いわけでなく、「誰」が「何」を語っているのかが重要だということを「エンティティ」という概念と共に紹介してくれました。

それらのシグナルを Google に伝えやすくするために、以下のような要素をサイトが満たすのが理想です。


E-A-T の成功パターンとして、ウェブサイトが備えるべき特徴も多数紹介してくれましたが、コガンさんのトーク無しにその点だけを抜き出すと逆に誤解を招く可能性があるので、この記事では割愛します。

コンテンツ マーケティング

コンテンツ マーケティングにおいて、「マーケティング」が忘れられているという鋭い指摘から始まったパートです。
今回のセッションの中でも最も濃厚で、ここだけ切り出しても 1 時間のセッションが成立するほど多彩なトピックが語られました。

  • リサーチ
  • フォーマット
  • サイト構成
  • チャネル
  • 拡散
  • リライト
  • チーム体制
  • 各施策のターゲット

今回のレポートでは、その中でもサイト構成において近年流行しているトピック クラスターと、コンテンツのフォーマットとチャネルの部分を紹介したいと思います。

トピック クラスター

元々は HubSpot 社が提唱した手法であるトピック クラスターですが、大まかに説明すると 1 つのトピックに対してハブになるページを作成し、関連するコンテンツ群と接続した状態(クラスター)を作成することで該当トピックに対して網羅的に回答できる構成を作ることです。

網羅性の高いコンテンツを作成しようとすると、ユーザー ジャーニーの中で少しギャップがある内容も含んだ長文になりがちですが、この構成では各ステップにおいて、そのときに必要な情報の単位でコンテンツを作成できるので、ユーザーが消化しやすいというメリットもあります。
また、関連するコンテンツどうしで相互に内部リンクを貼れるので、ページ ランク上のメリットも発生します。

今回のセッションで例として紹介されたのは、米国の金融系比較サイト Nerdwallet でした。
認知 → 検討 → 意思決定というユーザー ジャーニーの各ファネルにおいて、トピックごとに適切なコンテンツを用意することで強力なクラスターの作成に成功しているとのことです。

コンテンツのフォーマットとチャネル

コンテンツとは記事(テキスト)だけではなく、動画や音声や画像も含みます。また、配信できるチャネルも自社サイトだけとは限りません。
コガンさんが成功例として紹介していたのは ShopifyYouTube チャンネル日本語版)です。

アユダンテ社でも Youtube チャンネルを開設し、自社コラムと同じテーマの動画を作成し、コラム内にも埋め込んで利用しているそうです。

個人的には、こうしたテキストと動画の組み合わせのような取り組みは、以下のような点で優れていると感じています。

  1. テキストで記述することで検索性を担保できる(Web / サイト / ページ)
  2. 動画や画像は情報の密度が高いので、テキストよりも伝わりやすい場合がある
  3. ユーザーは自身の好みに応じて、好きなフォーマットでコンテンツを消化できる
  4. 検索ユーザーに動画や画像が求められた際に、検索結果が変わってしまうケースに対応できる


また、複数のフォーマット / 複数のチャネルで利用できるようにすることで、コンテンツの流通性や拡散性も担保できるようになります。

コガンさんのスライドでは「SEO はただの流通チャネルの 1 つ」として、他にもコンテンツをデリバリーできる以下のようなチャネルが紹介されていました。

  • SNS
  • ニュースレター
  • メールの署名
  • 営業資料
  • Slack コミュニティ
  • インフルエンサー
  • 有料メディア
  • パートナー シップ


トピック クラスター的なコンパクトで有益な情報を、複数のフォーマットで再利用して拡散の可能性を広げれば、結果としてバック リンク等のシグナルとして本体サイトにもメリットが増えそうなので、サイト(企業)が扱うテーマや商材によっては有効な施策になりそうだと感じました。

施策の優先度設定

全ての要素において最高の品質を持つサイトを作るのは難しいことですが、こと検索ランキングにおいては現時点で競合よりも優れていれば良い、つまり競合に負けているランキング要素の注力するのが施策の優先順位付けの目安になります。
このパートでは、下記のような分類で競合比較を実施する手法について、詳しく解説してくれました。

SEO のベースになる要素

  • テクニカル
  • コンテンツ
  • リンク、ブランド認知など外的要因

実際に何の項目で比較するかはサイト種別や利用ツールにより様々ですが、フォーマットのサンプルも紹介してくれたので、ぜひ参考にしてみてください。


また一方で、「インパクトの大きさ」で優先順位を付ける考え方も紹介されていました。
KPI と関連する KPF(Key Performance Factor)を洗い出し、相関性を特定したうえで優先順位を付けるという手法です。

私もそこまで細かく実施はできていないですが、主要なランキング要素別に期待度と工数を掛け合わせた施策リストを持っていて、それを実施の優先順位付けに利用しています。
個人的には、今回の優先度設定のトピックは特にインハウスであれば有益な内容だったのではないかと思います。

Appendix

セッションの締めくくりに、深く紹介しきれなかった以下のトピックに少しだけ触れました。

  • 多くのサイトで共通な SEO の課題(237 件のサイト診断で見えたパターン)
  • EC サイトに特化した共通課題
  • マニアックなテクニカル SEO テストまとめ

どれも興味深い内容でしたが、コガンさんに深く語ってもらったわけではないので、詳細については参加者限定(スライド配布対象者)とさせてください。

Q&A とネットワーキング

Q&A のパートでは多数の質問をいただきましたが、今回は私がした質問のみ紹介させていただきます。

Q. 近年の傾向からすると、来年はどんなトピックがトレンドになりそうですか?

A. 画像関連の検索と、現在は英語圏のみで展開されているプロダクト レビュー アップデート、そしてE-A-T

継続的に海外カンファレンスに参加しているコガンさんならではの回答で、とても興味深かったです。

他の質問に関しては、サイト名も公表しておられた方もいたので詳細には語れないのですが、これもやはりコガンさんらしく GA を利用した効果測定などにも踏み込んだ、とても有益な Q&A でした。

その流れで突入したネットワーキングは、5 月に開催した ISM SEO しくじりと同様に全員で語っていくスタイルで実施し、Q&A の続きのような空気感で進行していきました。

この形式を実施してみた理由として、前回の ISM Virtual 2021 で Zoom のブレイクアウト セッション機能を利用して複数のトーク部屋を用意したものの、コガンさんの部屋が一番人気だったという点もありました。
ただ、やはり大人数の前でカメラを ON にして声を出すハードルもあったように思えるので、引き続き最適な形式を模索していきます。

アフタートーク

今回のアフタートークは Twitter のスペース機能を利用して開催しました。
コガンさんにも参加いただき、イベントの感想や全く新しい話題などで 1 時間ほど楽しく会話をさせていただきました。

アフタートークで印象的だったのは、イベントに参加いただいていた方よりも、参加していなかった方のほうが多かったことです。
そもそも Twitter を頻繁に利用していない方もいると思いますし、Clubhouse が流行していた頃よりは音声での会話の盛り上がりも落ち着いたのかと思いますが、オープンな場所でふらっと入ってこれる機会を作れるという点では優れているので、また次回もこういった機会は設けたいと思っています。

実はその後 3 次会として別なスペースに参加し、明け方の 4 時まで話していたのは内緒です。


さて、ここで急にお知らせになってしまいますが、In-house SEO Meetup では ISM 香味泡(こうみあわ)というトーク イベントを毎週金曜の 20:00 から開催しています。

最初に乾杯をしてからスタートし、前半は今週の検索やマーケ関連ニュースの振り返り、後半は参加者の皆さんと雑談という構成です。


ISM 香味泡ではインハウス SEO 担当者だけでなくコンサル側の方も参加いただけるので、毎回多様な参加者と一緒に旬なトピックについて意見交換をしています。
たまにコガンさんも遊びに来てくれたり、他の企業の著名なコンサルタントも参加してくれたりと、オープンに SEO やマーケティングの話をできる場です。

開催の告知は ISM の公式アカウントから行いますので、興味のある方はフォローしてみてください。

香味泡で紹介するニュースや雑談のテーマは ISM の公式アカウントがツイートやリツイートした内容や、Twitter のハッシュタグ #香味泡 に投稿されたものからピックアップしています。
取り上げて欲しいネタがある場合はぜひハッシュタグをご利用ください。

イベント全体を通して

このレポートで紹介したトピックは、当日語られた内容の 25% ぐらいだと思います。
とにかく濃厚な内容だったので、全てを実践しようと思うと 1 年間では足りないぐらいの印象です。

参加いただいた皆さまのヒントや気付きになっていれば幸いですし、施策を実践した際には年末の LT 祭りにて共有いただけると嬉しいです。

ここで、イベント中のツイートを一部紹介させてもらいます。


前回の ISM Virtual に引き続き 3 年連続で登壇いただいたコガンさんには、この場を借りて改めて感謝します。

ISM Women で登壇いただいた江沢さんとの共著「いちばんやさしいスマートフォンSEOの教本」でも丁寧な解説が素敵でしたが、#AskGooglebot のような Google 公式動画の翻訳などのコラム執筆や、アユダンテ社の Youtube チャンネルでの活動など、引き続き楽しみに応援しています。


次回の In-house SEO Meetup も開催が決まりしだい Twitterfacebook で告知しますので、引き続きフォローをお願いします。

それでは、ごきげんよう!